2017年5月6日土曜日

「高等」教育無償化の前にやるべきこと

先日、安倍首相が憲法改正に向けた方針を語り、2020年にはいよいよ改正憲法かというので、この話題がにわかに盛り上がっている − とはいえ、まだ現実感がないのか、TVのワイドショーではスルーしている。

改正のポイントとしては、第9条はそのまま残して、自衛隊を保有することを明記し根拠規定を整えるというのが一つ、さらに教育無償化を実現する規定を設ける。具体的なことはまだ未定なのだろうし、そもそも財源があるのかどうかも分からないが、意外と前向きの印象を与えたようである。

ただ、思うのだが「教育無償化」は既に維新の会が提唱していることで、その趣旨は高等教育無償化である。大体からして、高等学校までは義務教育化せよという声が以前からある位だから、いまさら高校は無償にしますからと力説しても、ちっともインパクトがないのは確実だ。趣旨は大学(さらには大学院?)無償化でなければなるまい。

しかしこれを実現するには、以前にも投稿したように色々な難問がある。さらに言えば、それらの難問がないとしても、高等教育無償化の前にやることがあるのも事実だ。

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こんな記事が人気を集めているらしい。

 米国での寿司・和食ブームはとどまるところを知らない。米調査機関ピュー・リサーチセンターの2015年の調査では、米国人が日本と聞いて最初に思いつくものの首位は寿司・和食だった。日本貿易振興機構(ジェトロ)の13年の調査では、米国人が好きな海外料理で和食・寿司はインド料理を上回り、首位・中華料理とほぼ並ぶ2位だった。農林水産省の調査では北米の日本食レストランは13年からわずか2年間で1.5倍の約2万5千店に急増している。
(中略) 
 昨年、日本で「スシポリス(寿司査察官)」という短編動画作品が放送された。邪道な寿司を出す店を取り締まる捜査官を主人公にした作品だ。06年に日本政府が導入しようとした海外の和食レストラン認証制度に着想を得て、皮肉をきかせたものだ。海外からの激しい反発で導入は見送られたが、農水省は諦めていない。昨年には海外の料理人の和食調理技能を認定するガイドラインをつくっている。「適切な」知識・技能を習得した海外料理人の育成と情報発信をうたう。 
 だが、寿司の世界は急激に広がり、もはや日本政府が統制できる範囲をはるかに超えている。その規模と市場原理によってスシポリスが活躍するまでもなく、人気が定着する中で自然に自浄作用も働いている。 
 寿司のおきて破りの現地化と並行して、米国の都市部では築地からネタを空輸するような本格派の寿司屋も増えている。サンフランシスコでもミシュランの星を取る本格的な寿司屋が増えた。日本食ブームが長期間続き、日本で本格的な寿司を食べる経験をした人が増えたのが背景にある。 
 それを象徴するのが有名寿司店「すきやばし次郎」の職人、小野二郎氏の人気だ。ドキュメンタリー映画「二郎は鮨の夢を見る」は米国の料理好きの間でカルト的な人気を誇り、和食の話が出れば「ジローに行ったことがあるか」としょっちゅう聞かれる。14年のオバマ前米大統領の訪日時の会食場所に選ばれたのもこうした理由からだった。


こんな風なので寿司職人は引く手数多という。たとえ寿司職人になったとしても、世間はそう甘くはない。こんなデータもネットにはある。

平均年収:400万円でした。(口コミ調べ)
平均給料:22万円~34万円

すし職人の平均年収の範囲はおよそ300~500万円
一流すし職人の年収:700~1000万円
※九兵衛の年収を売上客数などから予測してみたところ1500万円以上になると予測されます。

海外すし職人(ニューヨーク)の年収:700万~1056万円(求人より)
海外すし職人(上海)の年収:400万~600万円(求人より)

(出所)平均年収.jp

確かに職人修行で期待できる生活もそれほど楽なものではない。

とはいうものの・・・、

そもそも大学新卒者が正規社員として採用されるのは60%〜70%程度という。
参照:https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/today/rt150126.pdf

非正規社員の年収は7割が200万円に届いていないというデータがある。昇給もほとんどない。
参照:https://mainichi.jp/articles/20160120/k00/00e/040/231000c

大学新卒者の平均年収も200万円程度である。
参照:https://careerpark.jp/4882

現状がこんな惨憺たるものである時、大学教育の根本を改革せずに「高等教育」だからという理由で無償で大学に進学できるようにすれば、どんな状況になるだろうか。

授業料がゼロになるなら大学(大学院にも?)に進学する動機を刺激する。しかし、独立して生活できるスキルを身につけるには、日本国内の大学(大学院も?)はほぼ全て役には立たない(もちろん学部による)。そして、本来は「もっと儲かる」はずの職人修行は、外国から日本に来た外国人に占められる。そんな実に情けない状態がもたらされるだけではあるまいか。

寿司職人だけではない。大工ほか建具職人、畳職人、表具師、染物屋、織物屋、仏壇職人、石材職人などなど、手に職をもった職人層の最近の収入傾向を調べて見るとよい。

現代という時代は、「和の文化」が金になる時代なのだ。日本の中で旧来の大学教育を受けても金にならない。そんな時代になりつつある。このことをもっと真剣に考えて見るべきだ。

政策的に無償にするというなら、確かにそれが日本人の公益となり、支援するだけの価値がある。まず先に、そういう状態にしておくには、役に立たない教育を続けているだけの大学の多さに目を向けなくてはダメだろう。




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