2016年11月10日木曜日

先行き不透明なアメリカ?

昨日1000円下がった日経平均株価は本日1000円上げて元の鞘に収まった。

大統領選挙でトランプ氏が勝利した直後のNY市場で株価が上げているという事実に安心したものとみえる。昨日は文字通り「吃驚した」から、狼狽売りに出たのだろう。

そのトランプ氏。新大統領が直面する問題は山積だとマスメディアでは評されている。それはそうだろうとも言えるが、特に「来年にはアメリカ景気が後退入りするかもしれません」という人もいるのだネ、これが。

実は最近、アメリカ景気はこの先景気後退入りする可能性が高いという(自称?)エコノミストが結構いる。

本当だろうか?

☆ ☆ ☆

今年の10月時点でこんな報道があった。

 米国は2つの筋書きのどちらかに必ず直面する。次期大統領の任期中にリセッション(景気後退)に陥るか、あるいは米史上最長の景気拡大を経験するかのどちらかだ。
 確率が高いのはリセッションの方だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の最新月次調査によると、エコノミストらは今後4年以内に景気後退入りする確率が60%近いとみている。
 これは、次期大統領が景気悪化を招くという評価ではない。むしろ、米経済がその歴史においてリセッション無しに10年以上成長を続けたことがないとの認識に基づくものだ。向こう4年に何らかの要因で経済が変調を来す可能性がある。その要因は景気回復の失速かもしれないし、連邦準備制度理事会(FRB)の政策ミス、あるいは海外発の衝撃かもしれない。
(出所) WSJ、2016年10月14日

もっと前の2月にはこんな記事があった。

米国はリセッション(景気後退)に向かっているのだろうか。市場はそう示唆している。
 ダウ工業株30種平均は12日時点で2015年5月につけた過去最高値から12.7%安の水準にある。安全逃避先としての需要が高い米国債の利回りが低下する一方、高リスク債券の利回りは上昇し続けている。そして、原油価格は約12年ぶりの安値を記録した。
 とはいえ、経済指標からはリセッション入りの気配は見受けられない。1月の雇用の伸びは堅調で、雇用主は人員補充に苦労している。

(出所)WSJ、2016年2月15日

確かにNY市場の株価は上がっていない。上がらない状況はリーマン危機直前に似ている。



しかし、2014年末から横ばい基調はもう2年近く続いている。2年横ばいを続けて、その後で改めて急落するというのは記憶にない。

今回の景気循環は典型的な設備投資循環である。これは株価の水準ではわかりにくいが、NY株価の前年比には明瞭に表れている。


前回の景気の山である2007年第4四半期は金融景気が形成したものだった。今回とは状況が違う―中国は多分にバブル気味ではあるが。

上の図を見る限り、すでに底入れを終えている印象である。というより、前年比という指標は位相差が混じり、現状判断としては後手になりがちである。

実際、鋼材価格は回復基調にある。鉄鉱石も足元では価格が急上昇している。

国際商品市況は景気先行性がある。気が付いてみると、来年初にはかなり景気の体感温度が高くなっている。そんな足取りをたどるのではないか。

最近OECDから以下の公表があった。

[パリ 9日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)が発表した9月の景気先行指数(CLI)で、ブラジルやロシアなどの新興国に加えて中国やインドなどで成長が加速していることが示された。
米国や日本および、フランスやイタリアなどのユーロ圏では安定成長が見込まれるという。OECDによると、短期的には英国も安定的に成長する見通しだが「欧州連合(EU)離脱をめぐるEUと英国の合意内容に対しては根強い不透明感がある」もよう。


ドイツ、カナダでも成長は加速しているという。

(出所)ロイター、2016年11月9日

先行き不安は景気に明るさが見えてくる、その間際に最も高まるものである。

それにしても「申酉騒ぐ」とは言うが、今年は文字通り騒がしい一年であった。いい加減にしてもらいたいのだが、来年も酉年。経験則によれば、落ち着いた年になりそうもない。が、そろそろ騒擾の時期は終わりかけている。

将来への種まきをするべき時機だと思われる。

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