2016年6月8日水曜日

財政赤字のツケはいよいよ直接国民に回る情勢になってきた

日本のメガバンクの筆頭である三菱UFJが国債入札の特別資格を返上するとの報道あり。
 三菱東京UFJ銀行は国債の入札に特別な条件で参加できる資格を国に返す方向で調整に入った。日銀のマイナス金利政策のもとで国債を持ち続ければ、損失が発生しかねないためだ。国債の安定消化を支えてきたメガバンクの「国債離れ」は、市場から大量の国債を買い上げてお金の量を増やしてきた日銀の異次元緩和に影を落とす。

 特別資格は「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」と呼ばれる。発行当局と意見交換する場に参加できるなどの特典がある一方、発行予定額の4%以上の応札を義務づけられることが、三菱東京UFJ銀の重荷になっていた。

 今回は財務省も資格の返上を受け入れる見通しだ。プライマリー・ディーラーには現在、メガバンクや大手証券など計22社が名を連ねている。日本の金融機関が資格を返上するのは初めてだ。これまでは外資系証券が本国のリストラなどで撤退した例のみだった。

 系列の三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券は投資家に国債を販売する業務を担うため資格を維持する。
(出所) 日本経済新聞、2016年6月8日

民間金融機関の「国債離れ」は既に2年前から伝えられていたことだ。

5月14日に3メガバンクグループが発表した2014年3月期の決算は、いずれも最高益を更新するという好決算だった。一方、貸出とともに各銀行の収益源となっている市場運用では、3グループの間で興味深い違いが出た。 
最大のポイントは国債保有残高の動向だ。三井住友フィナンシャルグループは13年3月末の26.2兆円から14年3月末で13.8兆円まで減らした(三井住友銀行単体ベース)。金額にして12.4兆円、実に約5割の減少だ。一方、みずほフィナンシャルグループは8.8兆円(みずほ銀行とみずほ信託銀行の2行合算ベース)、三菱UFJフィナンシャル・グループは8.1兆円(三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の2行合算ベース)減らした。
いずれも金額ベースでは8兆円以上というドラスティックな減少額だが、前期末比での減少率でみると、みずほが約3割、三菱は約2割と、三井住友ほどではない。
メガバンクに限らず、国内銀行は資金需要の低迷を受けて貸出が思うように伸びず、預金量が貸出量を上回る預金超過の状況が常態化してきた。そのため、貸出に回せなかった預金の一部は安全資産である国債投資に振り向け、その保有残高を膨らませてきた。 
にもかかわらず、メガバンクがこの1年で急激に国債の保有残高を減らす方針に転じた背景にあるのが、昨年4月に日本銀行がブチ上げた大量の国債買い入れによる金融緩和だ。黒田東彦総裁が「次元の違う金融緩和」と述べたが、巨額買い入れを支えたのが、3メガバンクグループによる大量の国債売却だった。 
日銀の異次元緩和によって、国債発行残高に占める日銀の保有割合は18.6%(13年12月末)と1998年6月末の19.5%に次ぐ過去2番目の高さに上昇した。デフレ脱却を目指す日銀は、国債買い入れによる金融緩和を今年も継続する。 
そこで気になるのは、メガバンクが大量に売り、それを日銀が買い取るという構図が今後も続くのか、だ。
 (出所)東洋経済オンライン、2014年5月16日

銀行は日常業務で国債を担保に使用することもあるので、最小限の国債は保有しておく必要がある。言えることは、資産運用としての国債保有は過去のことになりつつあるということだ。

今回の三菱UFJの決定は、日本のメガバンクが国内のカネ余りの捌け口として日本政府の国債を買っていく、結果として財政拡大が日本の景気を下支えしていく、こういうマクロ経済戦略は継続困難となってきた。こういうことである。

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ひと昔前(まだそんな過去ではないか?)には、政府の赤字国債で助かるのは一般国民、国債利回りの急激な上昇(=国債相場の急落)で損失を被るのは、国債を買うしか経営能力のない銀行、そして銀行を当てにしている株主たち、つまり日本の富裕層である。そんな話が井戸端会議をにぎわせていたものだ。

しかし、日本のメガバンクはもう財政破たんで直接には損失をこうむらない ー 全く被らないというのは日本に本店を配置する限り無理であろうが ー 政府の動きに対して頑健な体質をつくりつつある。

ということは、日銀が国債を買うしか政府は財政を運営できない。いつか限界が露呈した時、日銀が国債評価損を引き受ける。日銀を倒産させるわけにはいかないので、政府が税金で日銀を支える。

日本の財政も、単に銀行にしわ寄せするという段階から、日本の国民にダイレクトに負担を求めるという段階になってきた。

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消費税が8%とか10%とか、焼け石に水のような細かな話があるかと思うと、年金額を4割減額するとか、保険料を3割アップするなど出来そうにない議論があったりする ー そもそも年金額を4割削れるなら、消費税率を8%から10%に引き上げることで迷うはずがあるまい。

予想できるのは、相続税率の引き上げである。消費税率の引き上げより、やってみれば相続税率の引き上げのほうが、それも累進的な引き上げのほうが、社会的抵抗は小さいはずである - まあ自民党には無理かもしれないが。

ただ子供であることを理由に親の資産を継承できるという判断がいつまで社会的に容認されるだろうか?それでなくとも、資産の不平等は所得の不平等よりも高い。

個人金融資産は1700兆円。実物資産を加味した正味資産では2700兆円(2014年度国民経済計算確報、ただし個人企業を含む)。他方、国債残高は840兆円。個人が保有する資産は、いずれ誰かが相続する資産である。

親の死に際して親の資産を国が奪うのは一種の暴力であるには違いない。相続税率100%というわけにはいかないであろう。それでも、相続税率引き上げで財政が再建できるというとき、日本国民の何パーセントがその方向に反対するだろうか?相続財産などあまりないという子弟のほうがずっと多いのだ。

私有財産権はなるほど神聖だが、親の資産は子の私有財産では決してない。

・・・・・・田園調布や成城学園、芦屋や帝塚山などいわゆる「高級住宅街」が消え去っていくときは予想するよりずっと近い。そう思っているところだ。地方都市の名士が代々住んだ豪邸もいずれ文化遺産として市町村の保有になるだろう。

世代全体として今の高齢世代は財政赤字で得をしてきた。最後に資産をお国に納めて(子供は落胆するだろうが)、生涯収支のバランスをとるなら、必ずしも将来世代に迷惑をかけるとも言えないのである。

・・・ ・・・

ウン? みんな国有財産になってしまう? そんなことはない。
収納して公有となった実物資産は、若くて野心がある能力のある人に払い下げればよい。この時点で政府の債務と相殺されて財政は再建される。

何パーセントか、外国人に払い下げれば刺激的だろう。こうして資産は再び民間で稼働する。払い下げられた新たな企業家が分割払いで国に返済すればよい。

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