2016年5月10日火曜日

株が下がって「非難」するなら、上がれば「ほめる」ことになる

株価は上がったり下がったりするが、上がるのと下がるのと、どちらが「良い」現象だろうか?

そりゃあ、株価は上がるのがいいに決まっている。

確かにこれは本筋をついている。ただし、「マクロ的には」という形容詞がつけばである。資金を運用している投資家の立場からみれば、上がって嬉しい時もあれば、下がって嬉しい時もある。

株を現に保有しているときは、株価があがれば時価評価が上がるので、(売却を予定しているなら)それはそれで嬉しいわけだ。が、一定の配当が約束されている特定銘柄に投資しようと考えている場合、株価の上昇は投資の利回りが低下することになるので、株価上昇はイヤである。

株は(全体としては)売りたい人が半分、買いたい人が半分というのが市場の常態だ。なので、株価が上がってほしい人と下がってほしい人は、大体同じ割合だけいる。これが最もベーシックな認識である。

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さて、本日の日経にこんな記事がある。
 国民年金の損失問題も争点化したい考え。「我々の試算では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の15年度の株式運用は5兆円の損失だ」。民進党の山井和則国会対策委員長代理は4月15日に開いた党会合で声を張り上げた。株価底上げのために「年金を流用した」と訴える戦略だ。

 アベノミクスの失速をどう食い止めるか。政権内では17年4月の消費税率10%への引き上げの是非が焦点となっている。
(出所)日本経済新聞、2016年5月10日

確かに東京市場の株価を買い支えたいという動機は(内幕はまったく関知していないが)あるのかもしれない。

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小生もわずかな金額を日米双方の某銘柄の株に投資しているのだが、3年前の時点では日米それぞれ、評価額は半々であった。それが現在では米株が75%、国内株は25%と、大きな差がついてしまった。

理由は簡単である。米株が上昇したのだ。株価の上昇は事業が成長している証しである。反対に、小生が保有している日本株は世界を代表する大企業なのだが、企業全体として大して成長していない。だから株価はあまり上昇しないのだ。

日本経済の景気とは個別企業の景気を合計したものである。日本の企業の株を保有しても(上がってはいるが)評価額がアメリカ株に負けているのは、アメリカ企業には物凄いスピードで拡大している企業があるからである。そんな企業が日本にはない ー あれば当然投資している。

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アベノミクスも最初は「物凄いスピード」で成長する新興企業を雲のように登場させようと。そんな志をもっていたとは思うのだ。

そんな志があるのなら、国が保有している資金を事業に投資する。リスクを負担する。これは有効だ。日本国内の銀行が国内でリスクを負担してくれない。富裕層がベンチャー事業に出資してくれない。それなら国が出資して、日本国内で新規事業を成長させるしかないだろう。他にどうすりゃあいいんですかい?この志が間違ってるとは小生は思わない。

故に、年金積立金(の一部)を株式運用するのは、国家の政策としてありうると思う。まさかアメリカ株を買うわけにもいくまいー年金財政を考えれば買ってもよいとは思うのだが。国内のニュービジネス成長に寄与するために年金積立金を活用するなら、それはそれで「将来への投資」になる。年金にはリスクが生じるかもしれないが、いまは高齢世代が将来の日本を心配するべきときでしょう。やってもいいんじゃないの・・・・「リスク」負担してもバチはあたらないでしょう。そう思ったりもするのだ、な。

ただし、(当たり前のことだが)投資の「目利き」がいなければならない。いるんですかい・・・?

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リスクはある。株価は下がることもある。下がればすでに保有している株の時価評価額は下がる。野党が非難しようとしているのは「損した」というこの点である。しかし、事業内容が所与で株価が下がれば、今度は上がる可能性が高くなる。さらに新規購入には都合がよいのである。

株は下がるからイヤだという感覚で「国家による投資失敗」をなじっても議論が始まらない。下がるのがイヤなら、上がれば良いということなのだろうか。これは余りにも幼稚な議論である。

【加筆】
年金積立金の運用先。ひょっとすると・・・と思って調べてみると、外国株も含まれているようでしたね。
平成25年度末までの年金の運用は、安全な国内債券55.43%、リスクがある国内株16.74%、外国株15.59%、外国債券11.06%、その他1.46%で、約6割が安全確実な投資商品で運用されていました。
この安全運用の国内債券を35%まで減らし、リスクがある国内株を25%に、外国株を25%に、外国債券を15%にと増やしたのが現在の運用方針。つまり、これまでに比べて年金の運用はハイリスク・ハイリターンになっています。

(出所)http://www.huffingtonpost.jp/nobuto-hosaka/pension-risk_b_9014942.html

外国株に16%か・・・。6割は最も安全な国内債券。「安全」というより、ほぼ現金と同じ、ともいえる。それを国内債券を35%まで減らしたと。国内外の株を50%と。確かに国内債券じゃねえ・・・。投資にはならぬ。株式投資(≒事業投資)は内外半々。こりゃあ苦心のポートフォリオだ。このご時勢、ハイリスク・ハイリターンとまでは言えないねえ、というのが小生の感想だ。それより国内投資をするなら、国家自らがベンチャー・キャピタルになってはどうだろう。これこそ国家資本主義だ。明治の初めは国主導でいったのだから、もう一度やったっていいでしょう。それこそ「未来の夢」を切り開くアベノミクスってものじゃござんせんか。そのうち、景気が良ければ年金が増えて、景気が悪化すりゃあ年金が減るってネ。そんな時代になるかもしれませんヤネ。そうなりゃ、民間企業にお勤めの現役世代と同じ感覚で世をすごすってものじゃあないですかい。

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