2016年3月5日土曜日

米司法省 vs アップル: アップル優勢で判定勝ちか

個人情報保護をめぐるアップル対米司法省・FBIの対立は、どうやらIT業界が団結してアップルを支援する一方、米裁判所判事からも司法省の主張に疑問が呈されて、ここにきてアップルが優勢になりつつある。そんな案配だ。

日経でも紹介されていたが、司法省の主張に疑問を呈した米裁判所判事の意見を抜粋しながら引用しておきたい。

米連邦政府がカリフォルニア州サンバーナディーノで銃を乱射したサイード・リズワン・ファルーク容疑者のスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)」のロック解除を米アップルに迫っていた問題で、ニューヨーク州連邦地方裁判所の判事は2月29日、連邦政府の主張の一部に疑問を呈した。 
・・・ この見解は非常に興味深い。連邦判事が米司法省の検事らの要求を退け、代わりにアップル側を支持していることを示しているからだ。 
 オレンスティン判事はアップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)が指摘した点を一部踏襲した。 
 例えば、判事はこの問題を非公開の裁判所ではなく、米議会で議論すべきだと勧告。「この問題は昔の議員には想像もつかなかったテクノロジーや文化の現実について検討できる政治家同士で議論されるべきだ。米国の建国者らが既にこの問題について議論し、1789年に結論を出したと判事が言い張れば、憲法の地位や民主的な統治制度を求める国民の権利に背くことになる」と主張した。 
・・・ 判事が2月29日に米政府に仕掛けた攻撃でおそらく最も重要なのは、iPhoneのロックを解除する適切な技術を持っているのかどうかという点をめぐる政府の発言のブレだ。これは戦術のように思えるかもしれないが、その重要性は実際には極めて正当だ。政府は今回、iPhoneのロックを解除できなかったために裁判所による救済を求めたが、オレンスティン判事が指摘した通り、これは事実ではない可能性がある。
 判事は「政府は2カ月前、この地区で起きた別の犯罪事件での証拠排除の申し立てに反対し、全く異なる内容の発言をした」と指摘。国がアダム・ジボ容疑者と争った裁判で政府が提出した書簡を引用した。 
 書簡では「パスコードが分からなくても、政府の記録を入手する能力に重大な支障はない。(米国土安全保障省の国土安全保障研究所=HSIは)鑑識技術者に該当のiPhoneのパスコード機能を無効化させ、内部のデータを入手させる技術を持っているからだ。言い換えれば、HSIの捜査官は被告人のパスコードが分からなくても、特殊なソフトウエアを使ってその端末に保存されている記録を入手できる。このソフトウエアはパスコード入力の要求をすり抜け、コードを入力することなくその端末の『ロック解除』機能を作動させる。ロックを解除してしまえば、端末内部の全ての記録にアクセスし、コピーすることができる」と説明されている。 
 ここで言及されている技術は、アップルの基本ソフト(OS)「iOS」を搭載した端末のロックを解除するために、総当たりで攻撃を仕掛ける「IP-BOX」だ。ジボ容疑者のiPhoneは、iOS8.1.2を搭載した「5」だった。オレンスティン判事が政府に対し、当時と今回との発言の食い違いについてただすと、政府側はひどく動揺し、答えを濁した。
(出所)日本経済新聞、3月4日

当該判事は、あらゆる製品をネット経由で相互に接続するIoTが進展する中で、<安全保障のため>という名目で政府が個人情報にアクセスできることを認めれば、結局はあらゆるプライバシーを侵害する法的権限を政府に与えることになる。そんな指摘もしている。

加えて、民間企業にロック解除を強制せずとも、司法省は技術的にロックを突破できる。そんな発言を現に政府はしてきている・・・。

どうやら勝負はついてきたような雰囲気がある。


それにしても、日本の中央官庁(たとえば経済産業省や東京地検特捜部など)と民間大企業が係争している空中戦に東京地裁の判事が割って入って、政府の主張に疑問を呈する意見を公に述べるなど、ありえるか・・・

まあ、司法省が裁判に持ち込んでいるので、裁判官の立場から意見を述べたのだろうが、それにしても結論が出る前に一判事の意見がメディアで報道される・・・

メディアの権威、メディアへの信頼などなど、社会的背景が違うといえばそれまでだが、ここにも「お国柄」というものが表れている。


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