2015年11月12日木曜日

確かに合理的だが本質を外しているビジネスプラン?

日経に報道されている除染のためのビッグデータビジネス。これはどうなのだろう?

奥村組と伊藤忠テクノソリューションズ(東京都千代田区)は、膨大な数の除染土のうを、安全に効率良く運搬するために有効な「輸送統合管理システム」を共同で開発した。物流や施工、原価、作業員の被ばく線量などの大量のデータを一元管理して、活用する。例えば、最適な運搬の順序や最短ルートの選定が可能になる。 
 同システムの特徴は大きく三つに分かれる。 
一つが、土のうの数量や放射線量の管理だ。土のうごとに、その中身や詰め込んだ場所、発する放射線量などの情報を記録したタグを貼り付ける。搬出時にリーダーで読み取ればデータを自動収集できる。土のうの正確な数量や放射線量を把握して、トレーサビリティーを確実にする。 
 二つめが、被ばく線量の管理だ。作業員全員にGPS(全地球測位システム)機能付きの線量計を携帯させる。作業員の被ばく線量が上限を超えないように、位置情報や作業時間を常時監視する。 
 最後が最適な輸送計画の提案だ。搬出場所や搬出する時間帯、運行ルート、車両の必要台数などの最適解を算出。工期短縮につながる。
(出所)日経コンストラクション、2015年11月12日

ヤレヤレ、結局は生産側の都合で提案されるビジネスプランか、と。

まずは生活空間にそうした除染作業合理化を必要とするほどの放射性物質がある。この問題解決のためのビジネスプランが先にあって、そのサブプランとして上の発案があるべきなのではないか。

まあ、自然に考えて、そういう最適化されたグランド・ストラテジーが先に確立されているのに違いない、と。小生は勝手にそう憶測するのだが、それならば報道の中でも『推進中の▲▲計画を更に合理的に進めるために民間サイドで提案されているものである』と、たとえばこんな風に述べるべきだったろう。

実は、こんな感覚にたった指摘が欧州でも為されている。Financial Timesだ。日経を通して邦訳されているので引用しておきたい。ドイツ発のVWスキャンダルに関連する。

フォルクスワーゲン(VW)のスキャンダルにおいて最もおぞましい振る舞いは、同社ではなくドイツやその他欧州諸国の政府のそれかもしれない。各国政府はVWや他の自動車メーカーが目標を達成するためにもう不正を働かなくて済むよう、規則の緩和を追求しているのだ。 
(中略) 
 EUの原型となった欧州石炭鉄鋼共同体は生産者のカルテルとして創設され、そのカルテルは今なお現代のEUの遺伝子に組み込まれている。今回のエピソードが我々に教えてくれるのは、欧州単一市場で特定産業の狭い利益がその他すべてに勝る度合いだ。

 欧州経済の他の分野でも同じ傾向が作用している。EUが金融の単一市場を創設したとき、人々が国境を越えて銀行に預金できる、あるいはEU内に拠点を置くどの金融機関からも住宅ローンや消費者金融を受けることができる市場を作ったわけではない。創設したのは、銀行がホールセール業務を集中させられる市場だ。 
 単一市場がもたらしたマクロ経済的な影響――例えば域内全体の生産性や国内総生産(GDP)に与えるインパクト――が事実上ゼロだったのは、このためではないかと筆者は考えている。EUの閣僚や政府関係者が各国の規則を調和させるために集まるとき、彼らは経済が究極的にその利益に資するはずの市民――そして、公害のせいで死ぬ危険にさらされる人たち――のことをあまり考えていない。問題は経済でもない。

 唯一重視されるのは、生産者の利益だけだ。VWの一件のように問題の企業が繰り返し不正を働いたことが分かった場合でさえ、そうなのだ。
(出所)日本経済新聞、2015年11月10日


偽装や欺瞞は、そうせざるをえない程の締め付けがあったわけだから、その締め付けを緩めてやれば、企業も不正を働く動機をもたなくなる……。ま、こういうロジックであるな。それがいかんというわけだ。

★ ★ ★

提案される「ビジネスプラン」は、すべて企業利益に貢献するからこそ発案されるわけであって、「生産者の利益」が唯一重視されているとしても、理屈から考えれば当たり前すぎるほど当然のことである。

だからこそ、ソーシャル・ビジネスが有望な分野として成長しなければならないのであるし、小生が勤務しているところでも、ごくごく例外的な科目ながら「パブリック・マネジメント」などという授業があったりする。

ビジネススクールとともに行政学院が専門教育機関として確立されなければならない所以なのだが、不幸にして日本国内の専門職大学院としての「公共政策大学院」は、そのほとんどが『何故そこにあるのか?』、『何をどう教育しているのか?』、『官公庁エリート職員に対するエグゼクティブセミナーはどの程度の頻度で実施されているのか?』等々、小生からみれば対岸のことながら、いまだ姿が見えない、実にミステリアスな教育機関にとどまっているのだ。


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