2014年10月28日火曜日

安倍政権―悲しいかな、杞憂ではなかった…

政治とカネが問題になって政権が危機に陥るという現象は何も戦後日本に特有のことだとまではいわない。しかし、もう数えられないほど何度も繰り返し、日本の政権はカネの問題で崖っぷちに追いやられてきた。

戦後早々の芦田均内閣は昭電事件で崩壊し、造船疑獄では絶体絶命になった佐藤栄作議員を救うために犬養健法相が指揮権を発動して自らは職を辞した。長期政権を続けていた吉田内閣が倒れたのはこの事件がきっかけになった。その後もロッキード事件、リクルート事件等々、数えきれないほどである。政権トップも巻き込んで、これほどの頻度でカネの問題が政権を揺さぶり続けてきた先進国は、小生の勉強不足もあるのか、聞いたことがない。なぜそうなのかを真剣に考えるべきだろう。実は、カネの問題は戦後日本ばかりではなく、早くも明治維新直後からその時々の政権や将来ある政治家を危機に陥れてきた。山縣有朋が政治生命を絶たれる寸前になった山城屋和助事件は特に有名である。明治5年のことである。この時、西郷隆盛が山縣を評価していなければ、明治陸軍、ひいては帝国陸軍はなく、日清戦争もなく、日露開戦を決意することもなかっただろうし、朝鮮併合ということもなかったと想像される。

随分前に、安倍晋三氏が自民党総裁にカムバックしたとき、おそらくはこうなるのではないかという小生の予測を投稿したことを思いだした。そこでは次のように締めくくっていた。
ま、ひいき目に見て、首相自身は鈍感なのだろう。だとすれば、安倍晋三首相の側近には是非キョロマがいてほしい。昨年秋にも投稿したことだが、そろそろ誰か閣僚が傲慢な失言をして、そのフォローが拙劣に過ぎ、次第に内閣支持率が低下する。そんな突然の暗転が夏の参議院選挙の前に来るか、後に来るかで、日本の将来がある程度は決まってしまう。そんな風に見ているところだ。
昨年の5月1日の文章だ。

傲慢な失言と不透明な資金経理の違いがあるのは見込み違いだ ― 韓国に対してはかなり傲慢な発言と行動を繰り返している。

昨夏の参議院選挙には見事に勝利した。この春の消費税率引き上げとその後の反動もどうにか乗り越えそうな按配だった。TPPと原発再稼働もそれほどまで政権への逆風になっていない。株価も不安定な10月を通り過ぎた。長期政権への道が開きかけていたまさにその時、上で予想したような雲行きになってきたのは、やはり天の配剤というべきか…… 。

昨夏の参院選の勝利と消費税引き上げで、やはり中枢部に驕りが生じ、柔軟性をかき、多くの国民や外国がそうあってほしいという姿は何か、目を向ける気持ちをなくしていったのであろう。

あとは消費税率を予定通り10%に引き上げて体力を使い果たすか、未練に迷い何もかもを後回しにして、結果として指導力を喪失し、そのまま消えていくか。現政権の行方はこの二つのうちのいずれかではないかと予想する。

ま、今回も自民党内の諸氏に首相が足を引っ張られたといえばそんな図式である。首相と与党議員は、民間企業の社長と社員の関係とは違う。ましてオーナーと雇われ店員の関係とは本質的に違う。要するに、与党議員は首相を軽く見ていても、次の選挙には通る(ような)気がするはずだ。今回の「不正経理ドミノ」は党内の驕りと緩みが原因であることは間違いないが、日本政治の問題はこの緩みを締める指揮監督権限をもった党内役職者が不在である点にある。そしてこの問題は、低品質で問題ある議員にせよ選挙区の有権者が選んだ国会議員であり、所属する政党の責任者であってもその議員の職を剥奪することはできない。それどころか、「活動改善命令」を下すことができない。いわば、議員が各自各自で自由に対等な立場でやっている。立法府のこのような状態に原因がある。これが理屈であろう。

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