2014年7月14日月曜日

W杯―スポーツ統計学隆盛を予感する結果

ドイツがアルゼンチンを下して欧州勢が南米の大会で初の栄冠を勝ちとった。

下馬評ではブラジルが最有力であったが、不運なアクシデントもあって、3位決定戦のオランダにも完敗した。

がしかし、スポーツに「タラ・レバ」を言っても意味がないものの、仮にブラジルのネイマール選手が負傷で離脱しておらずとも、それでもブラジルの優勝の確率は実は低かったのではないか。そうみる人も多いようだ。

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先日投稿では、この10年間でサッカーは完全に変わってしまったというアメリカ人の見方をとりあげた。その話を同僚と食事をしながら話題にしたら、その同僚はヨットが趣味なので『そうですか、ヨットのアメリカズ・カップと全く同じですね。もうスキッパーの勘じゃ勝てないんですよね。というか、レースの前に流体力学の計算をコンピューターでやって、勝てるヨットを造る、そこが最大のポイントになっていて、船体設計でイノベーションを成し遂げたチームが勝つ。そんな風に変わってきたと言われてます』。ヨットでそうだから、自動車のF1レースなどは完全にコンピューターとデータ解析の勝負になっている。ドライバーは最後に車を戦略どおりに運転する担当者という位置づけになっているという。チームで議論をして、理解する頭脳がドライバーには求められるというのだから、もはやアイルトン・セナが疾走した時代とは、やっていることの質が変わってしまった……。アメリカ人がサッカーを見ていると、『ま、野球やバスケットではとっくに科学的方法を取り入れているけどね』とそんな感覚を覚えつつ、サッカーはいかにも古臭い、いまだにフィジカル&テクニック万能のスポーツに見えるらしい。

ビジネススクールの前回の授業では男子100メートルの記録を年次系列で並べると、直線トレンドの決定係数が80%を超える話をした。つまり、この30年間、一定のペースで100メートルの記録は更新されてきている。そのトレンドが、記録短縮の大半を説明している。そうなるのだな。天才的素質をもったランナーが、一定の発生率でコンスタントに登場するという見方はどうも非現実的だ。むしろスポーツ科学のコンスタントな発展が、結果として100メートルの記録更新となって現れている。そう見るほうが、リアリティに合致するのではないか。だとすると、ジャマイカのウサイン・ボルト選手の驚異的な世界新記録も、天才ランナーの新たな登場と見るよりも、むしろスポーツ科学の発展の成果として科学的に予想された優秀な選手である。そう語るほうが適切であるのかもしれない。

いずれにせよ、すべてのデータを蓄積して、時々刻々と変化する試合状況におうじて、勝つ確率が最も高い戦術を常にとっていく。それができるチームを編成できた国が勝つ。近年の最先端スポーツ革命がサッカーにも及んできた。そう見るべき結果であるのかもしれない。『そんなのサッカーじゃない、俺たちは俺たちのサッカーをやろうぜ』、それじゃあ結果として勝てないよ。勝利の方程式を導く基本ツールは、自分たちのスタイルではなく、データ分析である。それが最先端プロスポーツの世界なのだ。そうなるとすれば、これは統計学は面白い専攻分野になること確実だ。ひょっとすると経済分析よりも面白いかもしれない。20年遅く生まれるべきだったねえ……。

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