2013年5月16日木曜日

為替相場リアライメントが一巡してからが本番だ

この半年間<アベノミクス>というより、先進国の協調緩和拡大路線が功を奏して、株価は上昇した。特に日本はバズーカ砲に喩えられている<黒田緩和>で円安と株価上昇が急速に進んだ。

対ドルで円安(=ドル高)になるとすれば、ドル投資の無リスク利回りがそれだけ高くなる。他方、円投資の無リスク利回りはそれだけ低くなる。ということは、日米企業の経営見通しに変化がないとすれば、株価は配当を割り引いた水準に落ち着くはずなので、日本の株価は高値にレベル修正され、米国の株価は安値にレベル修正されるのがロジックだ。実際には、アメリカ経済の先行きは明るく、米株は1万5千ドルを超えてきた。加えて、円安は足下の日本企業に想定外の利益をもたらした。そのため、この半年間で東京市場の株価は7割も騰がった。アンビリーバブルな急上昇だ。

これは一つのデジャブ。1985年プラザ合意による為替相場リアライメントの繰り返しだ。但し、方向は正反対だが。韓国では<第3次円安>ショックと名付けている。
今回の第3次円安は、過去とは比べ物にならない嵐を呼びそうだ。世界的な景気低迷と円安が同時に起きるのは、韓国経済が初めて経験する状況である上、これまでとは異なり、現在は自動車、鉄鋼、半導体など、日本と世界市場で競合する品目が増えたためだ。日本企業は円安を追い風にして、海外市場を攻略するため、輸出製品の価格を引き下げている。
(中略) 
IM投資証券のイ・ジョンウ・リサーチセンター長は「第3次円安は同じ市場で争う韓日を崖っぷちでの対決へと追い込んでいる。日本企業が円高期に骨身を削る自助努力で競争力強化に取り組んだように、韓国企業も為替にだけ依存せず、長期的な視点で競争力を高めるべきときが来ている」と指摘した。
(出所)朝鮮日報、 2013/05/15 08:56 
 本ブログにも何度か記しておいたように、為替レートは基本的には各国の通貨政策から決まるものだ。カネの蛇口を緩めたり締めたりすることで、潜在成長力が高くなったり低くなったりすることはなく、せいぜいが物価に影響を与えたり、それが思わぬ景気循環を引き起こす初因になったりする位のことである。だから、上に引用されているように「為替にだけ依存せずに長期的な視点で競争力を高める」ことが最も重要なことで、この辺り、本質をきちんと押さえている報道ぶりである。ただ「日本企業が円高期に骨身を削る自助努力で競争力強化に取り組んだ」というのは、褒めすぎというか、買いかぶりでなくて本当ならいいのだがねえ、と思ったりするのも事実だ、な。

日本の経営者は、為替レートが下がって天からカネが落ちてきたような思いだろうが、「棚からぼたもち」は多分この半年の一度きりだ。事業の利益は為替レートで決まるわけでもないし、物価で決まるわけでもない。コストと売り上げで決まる。仕入れ価格と販売価格で決まる。品質と生産性で利益が決まるロジックに変わりはない。生産の実態と顧客評価が変わらなければ、物価や為替レートがどうなろうと、長期的な利益は実質的に変わらない。

大事なことは、高く売れるものを作る。これしかない。為替相場リアライメントが収束すれば、もともと歩いていた道に戻るわけだ。

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