2012年10月12日金曜日

給与の「官民格差」になにか実質的な意味はあるのか?

今日は、IMF・世銀総会が日本で開催された事もあり、世界経済の一断面を話題にしようと思っていたが、偶然見つけた以下の報道について、先に感想を書きとめておきたい。
福井県人事委員会(川上賢正委員長)は11日、55歳以上の職員の定期昇給を取りやめるよう、西川知事と吉田伊三郎県会議長に勧告した。
55歳以上の平均月給が、4月の調査で県内の民間企業(従業員50人以上、102社)の平均より1割高かったため。一方、民間企業とほぼ同水準だった月給とボーナスは、4年ぶりに据え置いた。
 見直しの対象は、警察官、教職員を含めた全職員の13・7%にあたる1827人。勧告が実施されると、全体で月額約50万円の人件費削減になるという。また、人事委は50歳代後半を対象に昇給幅を抑制する制度改正も求めた。
 全職員の月給は36万8183円(民間企業36万8112円)、ボーナスの支給割合も月給の3・95月分(同3・94月分)で、民間と差がなかった。
 西川知事は勧告を受け、「内容を尊重し、適切に対応したい」と応じた。県は勧告が適切と判断した場合、12月定例県議会にも職員給与条例改正案を提出、来年1月の昇給分から適用する。
(出所)2012年10月12日07時21分 読売新聞 
別に小生自身が国から給与を支給されているから思うわけではないが、55歳以上の「公務員」が支給されている平均給与と「民間企業」に在職しているサラリーマンの平均給与に違いがあったとして、そこになにか合理的かつ実質的・経済的な意味はあるのだろうか?警察官や教員も対象にするというが、教員の給与格差をいうなら公立学校教員と私立学校教員との格差を言うべきだろう。警察官に至っては滅茶苦茶なロジックである。大体、警察官の平均給与と民間サラリーマンの平均給与を比べ、どちらが高いとか低いという議論をしても、互いの感情を刺激するだけであって、実質的な意味はない。強いて比較するなら、民間警備会社で同レベルの仕事をしている人たちの給与と警察官の給与を比較するべきだろう。

IT技術者の給与が社会全体で仮に上昇しているとすれば、それはその職種につく人材が不足している現れである。単純労働者の賃金が低下しているとすれば、それは社会全体でその職種の労働者が供給超過に陥っている結果である。官民を問わずIT技術者の給与は引き上げなければ人材が調達できないし、単純労働者の給与は引き下げる方向にしないと不合理である。公務員の平均給与は、職務内容の構成から決まって来る最後の結果ではないか。犬の尻尾をつかまえて、頭の方向を決めようと言うのは、本末転倒だ。

ちょっと上の福井県の議論は、小生の目には、衰えた知的水準の象徴のように思えますな。 いくら歳をとれば頭脳活動が衰えるとはいえ、これが「長寿化社会」の行く末だとすると、ここが最も心配で、かつ嘆かわしいものである。

もちろん抑制的な人件費管理と攻撃的な安値戦略を背景とする賃金・物価デフレーションの進行は今回の本題ではなく、それはまた別個の問題である。念のため。

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