2012年9月5日水曜日

グローバル景気後退の確実度とマネー回帰

普通は景気後退に入るに伴って国際商品市況は低下するものである。ところが金価格はまた上昇してきている。


欧州の財政緊縮を背景とした需要減退が新興国の景気にも波及し始めているのが顕著になった6月以降、金価格は逆に反転上昇を始めた。オンス1500ドルを割るかと思われた価格は1700ドルに達しようとしている。

金利低下の中で資産価格が上昇するのは当然の理屈だが、世界的景気後退局面で相対価値が上昇すること自体、単純な一次産品でないことも明らかだ。価値保蔵手段の一形態、それも流動性の高い<準貨幣>、マネー回帰のツールの一つとして機能している点も再確認できる。

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日経には以下の報道があった。
企業が打ち出してきた強気の設備投資計画に変調の兆しが出てきた。4~6月期の設備投資は8兆3092億円と東日本大震災直後の昨年4~6月期から7.7%増えたものの、それを除けば1987年4~6月以来の低水準だ。欧米や中国景気の減速で先行きの不透明感が強まり、強気だった投資計画を先送りする動きが出ている。
出所:日本経済新聞、2012年9月4日 付け朝刊
 ドイツの景況感は4ヶ月連続で低下した。


Source: Frankfurter Allgemeine Zeitung, 2012, 8 27

以下はロイター東京発。
TOKYO, Sept 5 (Reuters) - Asian shares and the euro eased on Wednesday, with investors waiting for a European Central Bank meeting on Thursday and U.S. payrolls on Friday for signs of more action to counter European debt woes and support growth. 
MSCI's broadest index of Asia-Pacific shares outside Japan fell 0.3 percent to a fresh four-week low and Japan's Nikkei stock average opened down 0.2 percent 
"I don't recall anyone having had good economic indicators lately. Everyone knows the global economy is in a trough. The policies that will be announced to tackle the problems will be much more important," said Lee Seung-woo, an analyst at KDB Daewoo Securities in Seoul.
 今週末にかけて欧州とアメリカで重要な政策方針決定が為される。市場はそう期待している。

同じ頃、CNN Moneyには中国経済について以下のように報道されている。
NEW YORK (CNNMoney) -- China's factories continued to struggle in August, as a key manufacturing reading fell to a nine-month low.
HSBC's initial purchasing manager's Index for Chinese manufacturing fell to 47.8 from 49.3 in July, the bank said Thursday. Any reading below 50 indicates that factory activity is shrinking rather than growing.
... 
China, the world's second-largest economy behind the United States, has been hit particularly hard by therecession in much of Europe. TheEuropean sovereign debt crisishas prompted steep austerity measures in many countries. Weak conditions have zapped demand in the eurozone, the largest market for Chinese exports.
...
Despite the PMI report, major markets in Asia closed slightly higher, while European markets were all trading slightly higher and U.S. futures pointed to gains at the open. Federal Reserve minutes released Wednesday afternoon lifted investor hopes for more stimulus from the U.S. central bank.
Source: CNN Money, August 23, 2012: 7:54 AM ET 
最後はやはり、米国FRBによる一層の金融緩和期待でしめている。

昨日は日銀の元副総裁・岩田一政氏が日銀の追加緩和の必要性を指摘している。
[東京 4日 ロイター] 岩田一政・日本経済研究センター理事長(元日銀副総裁)は、世界経済の減速を背景に日本経済の下振れリスクが強まっているとし、日銀はさらなる金融緩和が必要になるとの見解を示した。具体策として、世界的な金融危機の予防と円高是正を目的とした外債購入や、資産買入基金で買い入れている国債の年限長期化が有効と語った。
世界同時・追加緩和の提案である、な。週末の米国FOMCでどんな決定がされるのか?世界の注目がこれほど集まるのも珍しい。<岐路>のようである。

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昨年秋には、財政緊縮ショックが2012年の世界経済にネガティブショックを与えるだろうと、下振れリスク要因の一つを予想していたのだが、どうやら現実になりつつあるようだ。というか、全体最適へ自己誘導するためのメカニズムの欠如、いまの政治的意思決定にまつわる<低生産性>が一層明らかになりつつあるというのが、正確な記述ではないか。個々の国家の、個々の政治家、個々の専門家の能力の欠如というよりも、やはりメカニズムの欠如が主因であると小生はみる。

周知のように、マネーのほとんどはマーケットが信用創造という形で自己生産している。マネーは金融機関という営利企業が自由に作っているわけだな。その信用創造は、景気拡大をより拡大させ、後退をより後退させる傾向があるというのが、ずっと昔からの指摘だ。素朴な金本位制とは別に、マネーを自己安定化要因にするためには、どんな方法があるのか。良い文献があれば目を通したいと探しているところだ。



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