2012年9月18日火曜日

法曹専門家養成制度は「制度」の名に値するのか?

国の制度というのは、ごく一般的に考えれば、全ての国民に統一的に適用されるものである。同じ状況にある者が異なった処遇を受けるとすれば、国家の制度の名には値しないだろう。そんな<愚例>の一つが現在の法曹専門家養成制度ではないかと感じるようになった。

愚息はこの3月に地元の法科大学院を卒業したが、国家試験を受験したのは卒業後のことである。在学中に受験しなかったのは、制度上できないからである ― 予備試験という抜け道は余りに人数が少なく、狭き門なのでとりあげない。司法修習は12月(11月下旬とも言っているが)から始まる。卒業後の半年余りは、奨学金給付も終了しているので、無収入になる。まあ、親御さんがいるでしょうとか、アルバイトをすればいいでしょうとか、その程度に国は考えているのだろうが、合否も分からないのに5月に受験をして、すぐにアルバイトをする志願者はいない。大半は親が金を出し、アルバイトをするのは親にカネがない家庭の子息だけである。この一点だけでも、これでいいのか、という疑問がある。

もっと奇妙な点がある。今日、職場の健康保険における扶養者認定の更新手続きをした。無収入である以上は、愚息を引き続き扶養し、医療機関受診に障害があってはならないからだ。ところが12月から司法修習が始まる。司法修習生は、従来・現在とも<準公務員>として位置付けられている。旧制度の修習生は、医局に配属された研修医と同様、毎月給与を支給されていた。しかし、給付方式は既に廃止され、新制度の下では生計費が貸与されるようになった。公務員に準ずるからアルバイトは禁止される。しかし「貸与」であるから支給される金額と同額の負債が生じる。それ故に貸与は所得とは見なされないのが論理である。親の被扶養者であったなら、そのまま扶養を必要とする経済状況にある。それが理屈だ。ところが民間企業の健康保険組合の中には、たとえ貸与という制度であれ、毎月定額の安定した収入がある以上は、親の所属する健康保険組合の被扶養者としては認定できない。それ故、国民健康保険に移行しなければならなくなる。そんな例も現実にあると聞く。

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小生が所属する健康保険は文科省の共済組合である。そこではどういう取扱いになっているかを事務官に質問すると、「司法修習生の取り扱いについては読んだ記憶があるんですよね。それを確かめればいいのですが、ただ文科省のポータルサイトは中国からのサイバー攻撃を避けるため、いま閉鎖されているんです」、と。

準公務員と定め、すべての関係者を同一に処遇するべきところを、結果としてバラバラの処遇をしている現実がある。その点に絶句していたのだが、それに加えて確認するべき事項を確認しようとすると、<中国のせいで>できないという。空を仰ぎました。今日は北海道も残暑で空は真青に澄み切っている。<中国のせい>だけではないだろう。<日本の統治者の暗愚のせい>でもあろう。そう思いました、な。

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「中国からの攻撃があるかもしれないので、今日は難しいんですよね・・・」。中国は台風とか地震ではないのである。人が住む隣国であって、モノ言わぬ自然現象ではないのだ。単純な行政事務が、対中関係のトラブルでできないとは・・・。

運転には、上手な運転と下手な運転がある。同じ目的地を目指すなら、燃費をおさえて、不必要なトラブルを避けるのが上手な運転の名に値する。この3年間の民主党政権は酷い運転ぶりである。たしかに法曹専門家制度は、制度自体が奇妙かつ杜撰である。それを洗練したものに改善してくれば、それはそれで司法改革の理念を実現しようとする努力の証となる。しかし、民主党は常に「もっと大事な事柄がある」と強弁し、必要なことは放置し、強弁したことは全て諦めるに至った。唯一の成果である消費税率引き上げは、そもそも民主党が約束したことではなく、官僚組織の成果である。これほど怠惰であった与党・政党を小生は知らない。何か一つは結果を出してきたという記憶がある。政権交代は無残な失敗であったというべきだ。<政権交代自体に意味がある(あった)>。もちろんこういう見方もあろう。5年連続でBクラスに沈めば、監督交代自体に意味がある。しかし監督を代えても駄目だった。<交代>にはもはや意味がなく、<力量>だけが意味のある事柄になってきた。そう言えるのではないだろうか。

いやいや、専門家養成制度の在り方から、民主党政治批判へと、またまた話が拡散した。この辺でやめておこう。

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