2012年4月25日水曜日

危機に立つヨーロッパ<メルコジ>体制をどうみる

フランス大統領選で現職サルコジ(Nicolas Sarkozy )大統領が危機に瀕している。おそらく次はオランド候補(François Hollande)が主導する社会党政権になる公算が高まっている。

昨日の産経新聞には次の報道がある。
ユーロ圏では昨年以降、債務危機のあおりで、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)の支援を受けたアイルランドなど8カ国の政権が交代した。
ギリシャやイタリアでは選挙で選ばれた政治家ではなく、欧州中央銀行(ECB)やEUの執行機関、欧州委員会で実務経験を積んだ学者官僚が首相に就任する事態となった。
経済・財政健全国のオランダでも、閣外協力する極右・自由党が政府の財政赤字削減策に反対し、21日に同党と連立与党の協議が決裂。ルッテ内閣は23日、総辞職した。9月にも総選挙が実施される見通しだ。(出所:産経新聞、4月24日(火)7時55分配信)
混迷を深めるギリシアは5月6日に国政選挙が予定されている。ここで野党が勝って、EUと約束した財政緊縮断行を覆すと、欧州の経済情勢は振り出しに戻る。というか、そもそもオランド候補は先に合意されたはずの健全財政を担保するための新EU財政協定には反対している。ギリシア問題を処理する政策理念に戻って、もう一度議論、ということになるかもしれない。

来年はドイツも総選挙の年である。ドイツは経済が好調だから、現政権が危機に瀕しているわけではない。しかし、地元の経済紙Handelsblatt紙には次のような報道もある。
Ist diese Beziehung nun in Gefahr? Klar ist jedenfalls: Dem künftigen Präsidenten werden die Finanzmärkte keine Zeit für Experimente lassen. Im Jahr 2012 gab bisher der Tango von Frankreichs Präsident Nicolas Sarkozy und Bundeskanzlerin Merkel den Takt vor - das Paar wurde ja auch „Merkozy“ genannt. Sie trafen wichtige Entscheidungen und beharrten auf haushaltspolitischer Stabilität.
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Der Wahlkampf in Frankreich hat so ein altes Thema wieder auf die Tagesordnung gebracht: Linke französische Politiker sehen sich schnell als Opfer finanzieller Machenschaften. Schon im Jahr 1924 traf eine Flucht aus dem Franc das „Cartel des Gauches“, eine Koalition sozialistischer und bürgerlicher Kräfte.(Handelsblatt, 24.04.2012, 20:10 Uhr)
 Merkozyと称されるこの二人の独仏首脳は、数々の重要な決定を共同して行い、政治経済的安定を<断固>維持してきた。その強固な関係は危機に瀕しているのか?こう言う位だから、Handelsblattは明らかに与党寄りであるなと感じられる。金融市場が、フランス次期大統領に<何かを試す>余地を与えることは、決してないと書いている。牽制球だな、これは。英国は、財政緊縮断行ではドイツと方向が合致し、財政主権ではドイツを含めた大陸欧州と対立している。これから欧州の政界がどう転んでいくか、さっぱり分からない。

ただ本日、上に引用した最後の部分がよく分からなかった。「左派からフランス大統領がでると、じきに経済的陰謀の犠牲者を気取ることになる」、「実際、1924年にもやったじゃないか」と。そう書いてある。この1924年にフランス政府は何か不義理なことをやったのだろうか?小生、そんな疑問を感じたのだ。

キンドルバーガーの『大不況下の世界 ― 1929 ‐ 1939』の第2章「第1次世界大戦からの回復」に目を通したのだが、第1次大戦後、フランス人が政府に寄せる信頼は低く、1924年9月から26年7月までの間に、10人もの異なる人物がほぼ同数の政府において大蔵大臣に就任したとある。フランは、1925年を通して下落し、26年春まで低落し続けたという。それゆえ、当時の欧州通貨事情は、金本位制復帰にこだわる英国ポンドが過大評価、大戦での被災地再建を強引に進めたフランス・フランが暴落ということになった。フランスの被災地再建事業の経費は、ドイツによる賠償金払い込みを充てにして、短期債務で調達したとのことだが、知ってのとおりドイツは天文学的賠償金の支払いには徹底的に抵抗し、欧州全体がアメリカに対してもつ債務問題とも絡みあいながら、最後には踏み倒し同然の賠償債務調整をした。また英国もドイツ側に対して心理的同情をもち、それが対独宥和策につながった。ドイツは1923年のハイパー・インフレーションをようやく解決して、24年は新マルクの下でデフレが進行していた時期である。その時期に、フランの暴落が進行したという、この頃の歴史的記憶を再び記事にしたのだろうか、と推察される。

左翼政権が<国民の痛み>を唱え始めると、ロクなことはないとドイツは警戒しているようなのです、な。文中、”Cartel des Gauches”は「詐欺師の協定」といった意味合いだから、かなり汚い表現だ。

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