2012年3月10日土曜日

官僚派 vs 党人派の政争の二番煎じはいただけません

自民党の派閥政治が華やかなりし時代、官僚派や党人派というニックネームが流行した。官僚派は簡単に言えば、昭和20年代に主流であった吉田派の流れを汲む議員グループで、池田勇人や佐藤栄作が率いた派閥。党人派というのは選挙に当選して這い上がって来た議員で河野一郎や三木武夫といった面々がいた。田中角栄は官僚派の佐藤派に所属し官僚操作の達人であったと伝えられるが、経歴はもちろん党人派の典型である。二つのグループは政策路線ばかりではなく、人脈、感性までをも異にし、その違いが派閥の雰囲気にまで染み通っていたらしい — そう耳にしている、ただし小生自身近くで観ていたことも昔あったが、体感的感覚はない。

現在の社会保障と税の一体改革、消費税率引き上げをめぐる政争をみていると、使い古された官僚派と党人派の抗争を思い出してしまうのだ、な。あれっ、民主党は<政治主導>ではなかったっけ?それはそうだが、官僚集団が提案してくる政策構想にどれだけストレートに則して政治を行うか、こうした面から眺めると野田現政権は<直官内閣>である。そうは言えると思うのだ、な。大体、野田首相の厳父は自衛官である。岡田副総理は元官僚である。党税調会長の藤井議員は古手の元大蔵官僚である。古川戦略相も元官僚である。玄葉外相は県議出身であるが政治家一家で育ったエリートである。枝野経産相は弁護士出身とはいえ、法曹専門家はエリートの一翼をなす。官僚派という形容から外れているとするなら、では中国流に<太子党>と呼ぶのはどうか。中々よい形容ではないかと感じるのだが。

ただ、どう見ればいいのか?太子党なる人間集団に共感を感じることはない。それでも確かに、巨額の国債発行に原発停止、最近の原油高が重なり合って、日本経済は緊急事態に突入している。それが持つべき認識だと小生は思う。放置すれば<マクロ経済的失速>という大事に至るかもしれず、万が一そうなれば、ギリシア的な<緊急引き締め>、具体的に言えば<公定歩合の緊急引き上げ>が絶対にないとはいえない状態になって来た。金利引き上げですよ。そうでなければ貿易以外の為替取引の許可制導入。資金流出の防止。この位は財務省の権限で簡単にできる。そうなれば日本はIMFと事態打開の協議を開始し、結局、増税を約束し、消費税率は15%程度に上がるだろう。その間、国内の物価は激しく変動して、国内の経済取引は麻痺するであろう。これが最近、時折、思いめぐらす近未来の悪夢である。

巡航速度で社会が発展しているときには民意をうけた政治家が日本国の将来を決めていくべきである。しかし、緊急状態においては必ずしもそうは言えないと、小生、思うのだな。

乱気流で衝撃的な急降下を経験すると、地面が見えることに恐怖を感じるようになる。しかし、着陸するには降下しないといけない。地面が見えると、子供が泣く、母親が「やめて」と叫ぶ。そんな時に<民意>を受けたパイロットが操縦していれば、飛行機が墜落するのは時間の問題であろう。システミック・リスクを回避するには、専門家が期間限定で権力を行使しなければならない。緊急事態は<敵国>が来襲するときに限ったことではないのである。そんな風にすら思われてくる、この頃である。

それにしても小沢一郎議員の判決はどうなるのか?状況証拠だけで死刑を判決できる国情である。判決は裁判官次第であろうと思う。有罪、無罪、どちらを出しても政治的意図を勘ぐられるだけに、裁判官も実に「やりたくない」と思う判決であろう。ま、今やこの話題は些事ではあるが、当該議員グループからは、いにしえの党人派的な、別の表現を使うと<大衆政治家>的な体臭を感じるのですね。<国民の本音>を当該グループが伝えているのか?それが、小生、このところ分からなくなっている点なのである。

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