2012年3月27日火曜日

福島第1、社会保障、統治機構 ― 三つの亀裂

今朝の北海道新聞を読んでいると、色々と一面を飾っている文字が目に飛び込んでくる。

「介護保険料上げ8割」。道内65歳以上で平均4千円を超す。これは65歳以上の人が負担する介護保険料(基準額)の新年度改定によって、運営市町村の約8割が保険料を引き上げることが分かったというもの。高齢者の自己負担は限界に近づいているとの報道だ。自己負担が限界なら、税を投入するしかないでしょう ― 公債の新規販売でこれ以上の支出はまかなえないと前提するなら。

その下には「福島第一原発2号機容器水位60センチ」。これは内視鏡検査によって想定で3メートルあるはずの水位が60センチしかないことが判明したというもので、東電は汚染水が建屋外に漏れているとみているということだ。しかしながら、これを解決するのは建屋に接近することすら困難な現在、ほぼ不可能なことだろう ― だからこそ内視鏡で確認したのだから。汚染水漏出は<放置>するしかないというのが現実なのだろう。だとすれば、その行く末はどう予測されているのか?近隣の住民はどのように対応していくのが賢明であるのか?専門的情報と知識を有している人はそれを語るべきであろうし、第一に政府がその点に触れるべきであろうと思う。

最も望まれている事柄に答えられないでいるというのは、事実上、いまの日本国の統治機能は決定的な損傷を被っている。その証だ。こう解するしかないのではないか。日本の立法府は<ネジレ現象>の下で、各政党が相互不信の罠に陥っており、政治活動らしい活動はストップしている状態だ。行政府は、また戦後官僚システムのうえに官僚排除を唱えて政権についた民主党が着座していて、たとえて言えば「木に竹を継いだ」状態だ。北海道という遠方から見ていても、まともに機能しているとは、到底、見られないのだ、な。

暗い気持ちになって1面をめくり、2面をみる。

「北電、送電網増強7千億円必要 ‐ 再生エネ受け入れで試算」。これは2011年度に接続申請があった風力発電と大規模太陽光発電所(メガソーラー)をすべて受け入れようとすれば、送電網増強に2千億円、天候によって不安定化する電力供給を本州に回電するための北本連系線を60万キロワットから240万キロワットに拡充するために5千億円、合計で7千億円のコストがかかるという試算を公表したものだ。そのコストをすべて(電力料金を通じて)道民に負担させるのは理にかなわない。なぜなら北海道内の電力需給という観点からいえば、それほど大規模な再エネ電源は必要ではないからだ。増加する電力供給は、東北電力経由で、首都圏を顧客として電力取引の場を設けない限り、むしろ道内電力需給の不安定化要因になる。それゆえ、送電網拡充コストの一定部分は顧客、ないしは国が補助金によって負担するべきであろうという趣旨の ― 北電はそう言いたいのであろう ― 記事である。

しかし細かな話しになるが、北電がインフラ建設コストを負担するのであれば、そうしてできる電力を道内需要者も消費する訳であるし、道外需要者もそうだ。北海道が<電力余剰地域>として、常時、電力を道外に販売すれば、そのプロセスの中で道外顧客が道内インフラ建設コストを負担する結果になるはずだ。コストを事後的に負担するのは顧客である。これが理屈だ。もちろん、北海道内のエネルギー政策として、ラディカルな再エネ拡大が<道民>にとって最適かどうか?これはまた別の論点だ。ま、いずれにせよ、食糧基地のみならず、エネルギー・ベースキャンプとしての役割も北海道に求めるのであれば、これは<国家戦略>である。であれば、今夏に大枠が明らかになってくるはずの新エネルギー計画を含め、新たな国土利用計画、経済発展総合計画でも記述するべき事柄のはずだ。

ところが、そうした国家戦略策定の場は政府内にはない。否、ないというと誤りになろう。まるで第一次世界大戦後に中欧の大国ハプスブルグ帝国が崩壊し、残骸国家とも思われるオーストリアが残ったように現・内閣府の中に旧・経企庁が所管していた計画業務担当の統括官が現にいる。しかし、みな知っているのだろうか?いまでもそんな総合計画策定の仕事を続けていることを。総理大臣すら知っているかどうか怪しいものだ。民主党国会議員に至っては、誰一人意識してもいないのではないだろうか?

これをみても、日本の行政府は<亀裂の入ったピラミッド>であると、文字通り断言できる気がするのだ。

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