2012年3月12日月曜日

ワイドショーの専門家の「専門家」ぶりについて

北海道某TV局で放送している地方番組でも、復興庁による復興交付金一次配分が問題になっていた。被災県の間で違いがありすぎるという批判だ。文字通りマスメディアは袋叩きの憤激ぶりであって復興相が陳謝するような雲行きだ。いずれも国に「袖にされた」宮城県知事に同情する意見を開陳している。

今朝テレビに登場した「専門家」は概ねこんな風に発言していた — 細部までこの通りというわけではない、発言趣旨ということだ。

事業費も結局は官僚が配分するわけですからネ、そこで官僚は自分たちの存在を主張できるわけです・・・私が考えますに、まず何も言わずにお金を県にあげるべきなんですよ。何がいけなかったか、何が悪かったか、実情調査をすることから始めるべきだと思います。やはり失敗例を公開して、共有知にする。そうしないとまた同じ間違いを繰り返すと思うのです・・・
やれやれ、と思いましたなあ。

そもそも何を話しているのか、さっぱり分かりませぬ。

「事業費は官僚が配分する」ことを批判してらっしゃるが、「配分作業」自体に反対なのであろうか?先着順で受け付けて、全部お金を使い切ったら、もうありません、と。手続きが遅れたのは、そのこと自体、復興への熱意が足りないことですよね、と。そんなことを言って、お引き取り願う。そう諭すのが良いとお考えか?聞いてみたいですねえ。

配分作業に官僚がタッチするのがいけないと云うなら、誰がせよ、と。大臣自ら、鉛筆を舐め舐めせよとでも。アメリカでは長官のことをセクレタリー(Secretary)という。元来の意味は「秘書」であるのだな。長官は大統領から見れば、個別分野を所管する秘書室長であり、その手足が官僚という書記官だ。日本では大臣はミニスター(Minister)だ。そのミニスターの下僚が国家公務員であり、命じられる業務の報酬として給与をもらっている。予算を被災地に配分せよというのは、大臣からの業務命令である。いくら官僚でも、復興予算を自分のカネだと思う輩はいない。いれば横領だ。

今回の騒動は、岩手県が90%超の採択率であるのに対して、宮城県は申請の50%程度しか配分されなかった。その差が大きすぎるというのが直接のきっかけだ。申請額に対する採択率だけではなく、配分額についても語るべきだ。北海道新聞では次のように報じている。


復興交付金の配分額決定 7県に計3053億円
復興庁は2日、東日本大震災で被災した自治体に対する復興交付金の第1回配分額を決定した。対象は7県59市町村、総額は3053億円で、県別では岩手957億円、宮城1436億円、福島603億円、青森、茨城、栃木、千葉が計56億円。産業復興や住宅再建など緊急性の高い事業への配分を優先した結果、自治体側の要望額4991億円の約6割に圧縮された。市町村別では仙台市の509億円が最高。 
配分額は地方負担を含めた総事業費ベース。地方負担は後日、特別交付税で穴埋めする。2日に各県と市町村に通知され、工事の発注が可能になる。第2回配分要望は3月末まで受け付ける。(出所:北海道新聞、03/02 12:32、03/02 13:09 更新)

宮城県は、申請に対して採択率が50%程度ということは、申請が2800億円程度であったことになる。岩手県はほぼ申請通りの960億円程度であったのだろう。もし申請通り満額を手渡すとして、岩手県には申請通りに960億円程度、宮城県には2800億円程度をそのまま支給してもいいのだろうか?それが賢明なのだろうか?どうしても、小生、金額をみるとアンバランスに思えるのだなあ。東北地域一帯を襲った地震による被害復興だ。宮城は岩手の3倍もらって当然なのだろうか?

震災被害は、宮城県では津波が中枢部を襲ったので、中央部分に集中しているという特徴がある。反面、岩手県は陸中海岸沿いに広く災害が南北に拡散している傾向がある。小規模の町では行政機能が崩壊している箇所もあると聞く。そんな地域では復興計画をとりまとめ、申請を出すにも時間がかかるのではあるまいか?それが岩手県と宮城県の今回の申請額の違いになって現れたのではないか。まして福島県は原発被害と避難の継続で地元に帰れないという事情もある。復興計画など作成できるのか、福島は?福島県への配分額は岩手県よりもさらに小額だが、申請自体が少なかったのではなかろうか。

こういう時は、先に出した者勝ちだ。宮城県がそんな気持ちでいるわけではないと思う。しかし採択率が低すぎるという理由で憤激するのは、あまりにも地域の状況の違いを無視した身勝手だと思うけどねえ。決して好感を感じませぬ。それが小生の偽らざる心情である。

この位、専門家であれば、語ってほしいのである。何が「官僚は予算配分で自己主張できますからね、カネを出すなら口も出すってことですよ」なのか・・・その辺の奥さんがやっている井戸端会議でももっとマシな話しをしている。いやしくもテレビという画面に<専門家>という立場で出るなら、もう少し素人では見落とすようなことを堂々と語るべきではないか。

テレビ番組の低品質ぶりには落胆することが多く、特にリーマン危機後は激増しているのであるが、今日の「専門家」の方にも呆れた次第であった。

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