2012年1月11日水曜日

駐英大使の寄稿をどう読むか — 英国と欧州

ダイアモンド・オンラインに駐英大使の寄稿が公開されている。タイトルは、英国はEU離脱に向かうのか、である。

英国内の世論、その英国をメンバーに残しておきたいという大陸諸国の計算もあって、今後、英国と大陸欧州諸国との関係は複雑化するだろう。この点は、本ブログでも何度か触れているところだ。

大使が結論部分で以下の指摘をしている。
EUサミットの次回定期会合は3月に開催予定であるが、それまでにも臨時サミット(1月末にも開催)やユーロ圏首脳会議等を通じ、今回の合意の条約化が進められると言われている。 
ユーロ圏、非ユーロ圏を問わず、今回の合意について、国内的にいろいろな観点から検討が進められており、その過程で、英国以外にも、この合意についていけない国が既に顕在化しつつある。 
つまり、条約化される内容に政府が賛成であっても、国内手続的に国民投票を必要とするため躊躇する国や、議会が反対する国などが出てくる可能性もある。しかし、条約化するとすれば、全27ヵ国または出来る限りそれに近い数の参加を得ることが望ましく、その間、事務レベルでの交渉参加を認められた英国に対する働きかけも含め、様々な駆け引き、交渉が行われると思われる。そういう意味で、条約化作業は曲折が予想される。 
一方で、債券市場は待ったなしで動いており、加盟国の破綻やその波及を防ぐためにどうやって時間を買っていくのか、この先も目は離せない。
今回、寄稿した大使の「個人的見解」は、小生が読む限り、極めて「悲観的見通し」としか思われず、邦文でこのような寄稿をしたのは、ネガティブ・フォーキャストの下で準備をしておくことが望ましい。そんな趣旨が伝わってくるのだな。

英国のマスメディアでは、イタリア国債市場の動向にもよるが、ユーロに与えられた時間は(極端な表現をとれば)「数日内」だと評する例もある。そんな英国内の雰囲気が駐英大使の事態を見る目に反映されていることもあるだろう。

少なくとも英国の政府機関内部では、ワーストケースに備えた対応について打ち合わせが進行中である。これを疑う余地は既にない。では、欧州金融市場で大波乱があったとき、日本政府はなおも国内でやるべき審議 − 具体的には社会保障と税の一体改革 − を粛々と続けられるだろうか?日本の劣悪なマスメディアが形成する「世論」によって、方向感覚を喪失しないだろうか?日本国民は?日本の市場は?

欧州も懸念されるのだが、我が国の脆弱かつ低品質のメディアと世論形成メカニズム、最表層の世論を考慮しつつ審議を進めるだろう政府と国会、小生には舞台に上がっている配役がとても不安に思われるのである。

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