2011年12月6日火曜日

欧州をドイツが突き放しても、IMFは見捨てず、そのIMFを救うのは金だろう

欧州危機は緊急的金融緩和措置でとりあえず小康状態に戻っている。しかし、欧州内銀行の経営不安、銀行救済措置の取りまとめ能力に対する市場の不信、更には根本原因である個別国家による財政運営が未解決である限り、問題は膨らむだけである。ドイツが欧州にコミットするのかどうかがカギであるが、ドイツが何の見返りもなく欧州を救済するはずがない。しかしドイツ以外の欧州諸国には、第二次大戦後にドイツに対して抱いていた心理的賠償請求権が今なお残像のように残っているだろう。とはいえ、ドイツは戦争のツケを今さら支払うつもりはないだろう。

IMFは欧州を救済する能力を持っている。しかし、それを支える経済基盤は欧州にもアメリカにもなく、中国など新興国のマネーにある ― いや欧州の一員たる英国がいまなお保有する巨大な海外資産を売却すれば無尽蔵のマネーを捻出できる。が、英国にEURO救済の意思はないだろう。更に又、新興国のマネーに依存して欧州を救済する選択はアメリカの国益と衝突するだろう。八方塞がりだ。しかし、それでもなおIMFは欧州を見捨てることはないはずだ。IMFが欧州を救済したとて、欧州が失うものは既になく、IMFは単なるツールであって欧州にとっては「とかげの尻尾」であるからだ。信頼を失うのはIMFになるはずである。

そのIMFを国際金融体制の最後の拠り所として再建できる能力をまだアメリカは持っている。アメリカが保有する金をIMFに預託して、IMFが金保有量に比例して国際通貨を発行すれば、IMFの信頼が崩壊することはない。

Wall Street Journal日本語版の11月17日付けには以下のようなコラム記事がある:
実際、ユーロ危機の唯一の勝ち組になるのは金なのだ。
それはなぜか。
この壮大な危機は今も進行中だが、その終わり方には2つの可能性しかない。1つはマリオ・ドラギ新総裁の下、欧州中央銀行(ECB)がこれまでの規則や制限を撤廃し、ユーロ圏国債の大規模な購入を行うこと。もう1つは大混乱を招く無秩序なユーロの崩壊である。
こうした状況になったとき、金相場はどうなるのだろうか。
ECBがユーロ増刷によって危機を乗り越えようとすれば、その規模はかなり大きなものになる。2兆ユーロは必要になると予想するアナリストもいるが、それで十分だろうか。イタリアの債務残高だけでも1兆9000億ユーロある。フランスの債務残高はおよそ1兆6000億ユーロ。これにギリシャ、ベルギーなどの債務を加算すると、すぐに4兆ユーロに達してしまう。民間の投資家が逃げてしまったら、ECBはその穴を埋めなければならず、ユーロ増刷の規模も一段と大きくなる。
ちなみに、米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和では、総額1兆8500億ドル(1兆3500億ユーロ)が注ぎ込まれた。これが昨年から今年にかけての金価格急騰の直接的な原因になったのだ。ECBが救済を必要とするすべての国の債券を買い始めたら、市場にはその3~4倍の資金が流入してくるだろう。これにより、金の価格は必然的に上昇する。
あるいは、統一通貨が無秩序に崩壊するかもしれない。1つ、または2つの国が離脱すると、ユーロという制度そのものが崩れてしまう。新しい通貨が急きょ導入され、いくつかの国では資金の国外流出を阻止するために資本規制が強化される。その他の国では損失の規模が明らかになった銀行が軒並み破綻する。
この想定でも金の価格は上昇する。大混乱は貴金属にとってプラスにしかならないからだ。実際、ユーロから離脱した国では一定期間、金だけが有効な貨幣になるかもしれない。新通貨の制度を確立してそれなりの信用を確保するには時間がかかる。その実現までは昔ながらの物々交換や硬貨での取引が行われるだろう。
現実的な解決策が見つからず、この壮大な危機があと2、3年継続したとしても、金相場は好調を維持するだろう。人々のあらゆる紙幣に対する信用は、危機によって着実にむしばまれていく。今なら、金に投資して失敗することはないだろうし、それはユーロ危機から身を守る唯一確実な手段にもなる。
20世紀は金本位制から脱却する100年になったが、21世紀は金本位制を代表とするハード・カレンシーの利点が改めて評価され再建される100年になるだろう。

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