2011年12月5日月曜日

生産現場の意外な粘り腰

日本経済新聞社がまとめた2011年度設備投資動向調査(対象1426社)の結果が報道されている。それによると、全産業の設備投資額は前年度比で14.4%の増加だ。国内投資、海外投資の内訳がとれる838社についてみると、海外投資が39.2%増、国内投資が17.1%増になっている。

国内企業の設備投資マインドはリーマン危機以降ずっと弱気のままであり、それは直近の機械受注統計からもうかがわれる点、本ブログでも以前にとりあげた。


これから国内投資需要が拡大するとは到底予想できない形だ。非常な勢いで増えているのは日本企業が海外で行う設備投資である。

内閣府「法人企業景気予測調査(7~9月期調査)」は調査対象が1万5千社と桁違いに大きい。数字としてはこちらが信頼できる。23年度における設備投資スタンスは大企業・中堅・中小、製造業・非製造業とも大半が維持更新であり、「生産・販売能力の拡大」を1位にあげたのは製造業の中小企業だけである。また設備投資金額見通しとしては、23年度は5.4%の増加となっている。内訳は製造業が9.0%増、非製造業が3.0%増になっている。どちらにしても数字は見通しである。

確かに投資は拡大基調にあるとはとても言えないが、それでも製造業投資額が前年度比9%増というのは悪くはないと感じる。と同時に、非製造業の投資の弱さに日本経済最大の弱点を見るようだ。同じ内閣府調査で経常利益をみると、今年度前期では5.1%の減益だが、下期は10.5%の増益を見込み、年度全体では2.8%の増益という見通しだ。景況感そのものも、中小企業はあいかわらず悪いが、今年第4四半期から来年第1四半期にかけて景気は上昇すると予想する企業が半数を超えている。明らかに景況感は今年6月頃を底にずいぶん良くなっている。

今日の日経朝刊「景気指標」で有効求人倍率をみると、2009年全体で0.45倍とどん底であったが2010年には0.56倍、今年に入って大震災前後に一時低下したが、夏からまた改善が進んでいて、10月は0.67倍まで上がっている。失業率も09年度、10年度より下がっている。労働市場はパッとはしないが、状況は良くなっており、悪くなってはいない。中々の粘り腰である。

世はギリシア危機がイタリアに飛び火して、いまにもEUが崩壊しようとの流言がとびかい、日本は日本で復興、TPP、年金と消費税で声ばかりが大きい。ヒュンダイが日本に再上陸するというし、第3のビールも韓国メーカーにシェアを奪われている。寒い歳末が尚更寒くなるようだ。しかし、経済の診断は数字をみて行うべきだ。だるい、しんどい、力が出ないは気の病である。本当に悪ければ数字に表れる。日本経済の数字は、実にしぶとく、底堅く動いている。

ただ一つ、ハッキリしているのは<デフレ>。相変わらず名目が減り、実質が増える「名実逆転」が続いている。デフレ継続は明らかだ。デフレは中国のせいか?まさか今なおそう考えている御仁はいないと思うが、その中国ではインフレが止まらず政府は悩んでいる。日本以外の先進国でデフレに苦しんでいる国はない。小生は、日本の政策当局にデフレ解消の動機があるかどうかを疑っている。なぜなら民間経済全体に、そもそもデフレ解消への誘因があるとは、必ずしも思えないからだ。日本経済は安定したデフレと大量の国債発行が織り込まれた構造になってしまっている。日本の民間黒字・財政赤字・経常黒字という資金偏在はデフレの継続と双子、いや三つ子の関係にある。デフレからインフレに逆転させたいと願う真の誘因をもっている日本人はどこにいるだろう?いないわけではないはずだが、それを小生は疑っている。デフレの犯人を国外で探す必要はない。

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