2011年11月1日火曜日

公務員住宅は無駄づかいなのか?

朝食をとりながらTVをみると、大体はワイドショーである。「このワイドという形容詞は、政治、経済から殺人、誘拐、詐欺事件まで、それに料理関係やゴシップまで何でもあり。だからワイドなのだな・・・」そんな下らない語義分析を独り言でつぶやきながら ー これ自体が加齢現象だが ー 珈琲をのむと、公務員住宅は税金のムダづかいの典型なのか?そんな話題でコメンテーター達が話していた。

話しの流れとしては「ムダかムダでないかは、公務員がどんな仕事をしているか、仕事の内容によるでしょう」、「中には建築後39年、壁がはがれかけている老朽物件もあったりします。一概には言えないと思いました」、これはレポーター役をやった人の言。

とはいえ、ムダである仕事をしている公務員は、本来は、いてはならないはずだ。多すぎる公務員が配属されているなら、多忙な部署に異動させればよい。老朽化した建物も、傷んだ箇所を補修すればよいことだ。ワイドショーの話しはどうも政府公報のようであったのだな。

ただ、民間なら社宅、官なら官舎、これらは一体何なのか?ここが分かっていないと、「社宅?公務員住宅?ムダだろ、ムダ、ムダ!」という本筋をはずした議論に堕してしまうのも事実である。

社宅にしろ、官舎にしろ、市中の家賃相場と居住人が実際に支払っている家賃の差額は、経済データとしては<給与住宅差額家賃>として、企業(ないし役所)が払った給与に計上されている。つまり、社宅や官舎を市中相場よりも安く提供しているのは、給与の一部であり、つまりは<現物給付>である。

<現物給付>という形でなぜ給与を支払う必要があるのか?なぜマネーで支払わないのか?それは被用者側(社員や公務員)でなく使用者側に有利だからである。

実は、現物給付という形で報酬を支払う例は、非常に多く見られる。ベンチャー企業の役員報酬の一部に自社株をあてる、いわゆるストックオプションはその好例である。金額ベースの評価額がまだそれほどでもないときに自社株を支給された経営者達は、その評価額を向上させるべく懸命に努力するはずだから、ストップオプションという報酬支払い形態は理にかなっている。マネーによる支払いを節減することもできる。また、ずっと昔、高度成長時代にメーカーに勤務していた人たちは、不況時に自社製品を賞与の一部として支給されたことがある。たとえば小生の家庭は父が合成繊維メーカーに勤務していたのだが、時々、Yシャツや下着を支給されて帰宅したことがあるのを覚えている。住宅現物給付もこれと同じである。官舎や社宅の家賃をゼロにしてもよいのである。その場合は、差額家賃給付ではなく<丸ごと家賃給付>となり、その分、マネーによる給与支払いが低下するだけの話しである。

官舎や社宅の本質は、給与の一部を住宅で現物給付している。つまり住む所を<指定>しているところにある。

なぜ居住場所を指定する必要があるのか?指定する必要がなければ、住宅という現物でなく、おカネで報酬を支払えばよい。そうすれば、職員は広さと通勤時間を考えながら、自分が好きな所に住むであろう。実際、公務員や会社員である持ち家世帯は、首都圏ならば平均して40分位の時間をかけて、毎日通勤しているのではないか?住宅手当というマネーの形で報酬をもらうのが、もらう側にとってはもっとも有り難いものなのだ。

しかし、地方の製造工場、中央官庁、地方自治体では、特に管理職については、工場の隣接区域、あるいは都心部に社宅や官舎を建設している。これは家族とともに居住する場所を指定する、いや指定することは法律的にできない、指定するなら家賃はゼロにする必要がある。指定ではなく、一部現物給付。本人が支払う家賃を低くすることで、都心部に居を構える誘因を与えていると考えないといけない。(以下、この段落末尾まで追加)その理由は1時間もかけて職場に駆けつけてこられる場所では埒があかない。都心部に関係者が集住する必要性があるからだ。この事情は、第二次大戦中に英国のチャーチル内閣は防空壕に合宿して、朝から晩まで顔をつきあわせて、ドイツへの反撃策を練っていたのに対し、日本の海軍省では戦争中でも職員は定刻に退庁して自宅に三々五々帰っていたという事実とも関連する。役所の隣接地域に官舎を建設していれば、職員に24時間勤務を要請して、必勝の戦略を立案させる一助ともなったろう。地方工場の社宅の必要性は論をまたない。以上、官舎や社宅は被用者の満足を高めるためではなく、あくまでも使用者側の都合から発生したものである点を念頭に置かないと議論が迷走してしまう。それも致命的な愚かさをもって。

現物給付も含めて、幹部級官僚に支給している報酬は相当高額になるのであるが、その近隣で類似の管理的業務にあたっている民間企業の取締役が金額・現物両方のベースでどの程度の報酬を支給されているのか?ここを比較しないと、本当に公務員住宅はムダであるのかどうかを議論できないはずである。

0 件のコメント: