2011年7月16日土曜日

リンク集 — エネルギー政策・原発・復興構想

管首相の脱原発宣言で大騒動になるかと思いきや、あれは首相の個人的思いであります、そうです、私の個人的思いでありました、そんな成り行きとなり、なあんだという気配。どうも言うこと、為すこと、地に足が着いていない。

エネルギー政策の中の「電力固定価格買取制度」がオーバーヒートしているが、「炭素税」の仕組みや税率も要点だ。日本では、地球温暖化対策税という呼び名で新税が石油石炭税に上乗せされる形で今年度から導入され、税収はエネルギー対策特別会計に繰り入れられている。使途は、電気自動車の支援とか、太陽光発電の支援に充てられる。余剰電力買取が台風の目のようになっているが、本来は炭素税率と表裏一体で実行される政策で、今回の再エネ法案は現行のエネルギー基本計画に基づく、後半部分にあたる。別に新しく出て来た新しい政策というわけではない。

地球温暖化対策税を東日本大震災の復興財源として転用していこうと民主党が考えているらしい、というので一寸した騒ぎになったので記憶されている方も多いだろう。

管首相が言うように、原発をゼロにするべく、再生エネルギーを現行計画よりずっと速いスピードで拡大していくのであれば、これは大変である。地球温暖化対策税率を大幅に引き上げて、財源を確保しないといけない理屈だ。早くこれを言い出さないと理屈に合わない。もし言えば、産業界との大論争に発展すること、間違いなし。

政府のエネルギー政策が、国民・産業界を振り回しているのは海外も同じ。最近ではドイツの脱原発決定が知られているが、イギリスもそうである。

電力市場改革は企業の海外流出を招く懸念(Daily Telegraph, 2011年7月16日より)

たとえば、John Cridland, director-general of the CBI, said: "Some energy-intensive industries are already on a knife-edge, and without help to shield them from new measures like the carbon floor price, they could struggle to stay in the UK." — いまでもエネルギー多消費産業は瀬戸際(knife-edge)状態にある。炭素税のこれ以上の負担からは免除してくれないと国内にとどまるのは困難だ、という趣旨。ちなみにcarbon-floor-priceとは炭素税の基本料金のようなものだが、内容だけをみると、まるで日本の報道かと思うだろう。

昨日投稿したオーストラリア事情を目にしても、今後の日本の議論の盛り上がりが想像できるのだが、以下のような記事を見ると、<地産地消>というか、自分たちの暮らしはエネルギーも含めて自分たちでまかなう気構えが伝わって来て、これは堅実な社会だなあと、小生などは正直感じたりもするのである。

市民が取り組む再生可能エネルギーの普及活動(ドイツ環境見聞録から)

「省エネこそ最良のエネルギー」、この理念に反発を感じる人は少なくないだろう。しかし、次の指摘は、日本も考えてみる価値はあると思うのだ。
さて、太陽光発電の累積導入量についてみると、日本は1997年から2004年までの8年間世界一となっていました(ソーラーパネルの生産量は2007年現在でも世界一)。しかし、2005年には、ドイツに世界一の座を明け渡してしまいました。この原因の一つとして、ドイツにおける固定価格での買い取り制度とは対照的な日本の法制度があると考えられています。
自然エネルギー拡大は、モノ作りを捨てることである。そんな風な意見がよく言われる。

製造業の役割はまだまだ大きい(Wall Street Journal, Real Time Economics)
What’s more, goods have tended to play an outsized role in the behavior of the economy. That’s because the goods portion of GDP tends to move up and down sharply as the economy enters and exits recession. Services, which account for nearly two thirds of GDP, are far more stable.
Despite its diminished role, then, the better off manufacturing is, the better off we are.
サービス業は景気・不景気でそれほど売り上げが激しく変化しない。よく言えば安定している。しかし、景気拡大の特効薬になるのは製造業の回復なのだ。その事情はアメリカも同じである。

上の記事は短期的な景気循環の中で製造業が果たす役割を見直したものだが、それ以上に製造技術を保有することの戦略的意味がある。リーマン危機直後にイギリス金融機関が経営不安に陥ったときに、EU加盟国全体が金融不安に対処する基本方針については、すべての国が合意した。しかし銀行に注入するべき資金協力についてはドイツ政府は拒否した。「ドイツの製造業が将来経営不安に陥ったときにイギリスの銀行はドイツのために経営支援をするだろうか?するはずがない。故に、我々も英国の金融機関の経営再建のために資金を拠出することはしないのだ。経営不安は資本主義のルールに沿って解決されなければならない」、当時、こんな趣旨の見解が報道されていた。ドイツが持っている自動車、化学、機械産業の生産技術はドイツの先達の血と汗が染み込んだ国家の財産であるという自覚が伝わってくる話しではないか。小生、この話し、とても好きなのだ。

そのドイツが脱原発に舵を切っている。モノ作りを諦めたはずがないのである。それは一つの国家戦略であり、民間企業はまだしも、政府は「十分勝てる」と確信している。そう見るべきだ。

売れる数を増やしたい、だから新興国が活躍する土俵が羨ましくなり、今更ながらというか日本ブランドを引っさげてローエンド市場に参入する。(ないと思うが)もしこんな発想をしたら、墓穴をほる。

低価格製品シフトは製造業を衰退させる(野口悠紀雄、東洋経済オンライン)

少し話しが固くなった。日本の自然エネルギー派と言えば河野太郎議員。これまで同議員の見解をまとまった文章で目にする機会は少なかった。下の記事を挙げておきたい。

河野太郎、原発と再生可能エネルギー(ダイアモンド・オンライン)

河野議員の核燃料サイクル不完全論を待つまでもなく、下の記事を読むと日本の原子力発電事業を担う人材そのものが枯れ果てつつあるのではないか?こんな状況では、そもそも原発を続けるのは無理じゃなかったのか、と。

原子力研究の落日、使命を見失った学者達(東洋経済オンライン)

ま、ともかくもエネルギー戦略と被災地復興、民主党だろうが、自民党だろうが、はたまた緑の党・日本が旗揚げするのでもよいから、真剣に取り組んでほしい。

最後の疑問。復興構想会議の提言は、どうなるのだろうか?新内閣が責任をもって実行するのだろうか?提言は、あまり評判がよくない。

霞ヶ関文学の羅列になった復興構想会議の提言(岸博幸、ダイアモンド・オンライン)
復興への提言—悲惨の中の希望(東日本大震災復興構想会議提言<オリジナル>、首相官邸より)

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