2011年3月26日土曜日

原子力発電はどうなるか?

エネルギー開発は小生の専門外でいわば素人だが、最近の出来事について考えをここで整理しておきたい。(何度もとりあげるつもりはありません)

原発による電力単価は、水力、化石燃料、太陽光などと比較してずっと安い、故にエネルギー源としては原子力が最も有望だという考え方が専門家の間では通説だった。

しかし、起こりうる事象の下で発生する外部不経済(=放射能汚染、環境負担)による土地資産毀損額を割り引き(つまりは保険料を計上し)、あらかじめ電力コストに含めることにすれば、原発は決して安価なエネルギー源ではない。原発が安いという論理は、たとえば水俣病を引き起こした企業が本来負担するべき費用を会計上は負担せず表面上の利益が出ていたことと同じ理屈である。今回の東電福島第一原発の事故は、事業者が本来負担するべき費用と利益の関係に目を向けさせることだろう。今後、原子力発電事業を民間企業が手がけるのは極めて高コストで採算に合わなくなるのは間違いない。

安いと考えられていたエネルギー源が実は高い、ツケが回ってきて驚いた、という図式なのだが、今回の事故が稼働40年にもなる最も旧式の「おんぼろ原子炉」で発生した点は、将来のことを考えると大変残念だと考えざるをえない。最新鋭の原子炉が実現しているという高機能、安全性を熟知せず、「原子炉はやはり危険だ」と拒否するのは、最新鋭の医療技術を駆使した遠隔手術を勧められた患者が「子供のときに盲腸を手術したがあれは本当に辛かった」と手術を拒否する図式とそれほど異なるものではないように感じる。とはいえ、現実には新規の原発立地はもとより、既存の原発の運転、再稼働すら地元の了解が得られるのかどうか定かではない。

仮に、1ワットの電力を得るための費用が水力、化石燃料による火力、原子力などで均等になっているとしよう(=企業は最も効率的に設備ポートフォリオを保有している)。その場合、今後、どのエネルギー源を利用していくのが合理的だろうか。発電した電気は同じであり差別化はされていないので、資源価格と投資費用の将来見通しが鍵になる。

これまでの常識を覆すような技術革新をとりあえず無視すると、石油は埋蔵量と地政学的な調達リスクがあり価格的にも上昇トレンドが避けられない。水資源は国内では制約がある。原子力も燃料に制約はある。ただ燃料の将来価格は低めのラインで予想できるのではないか。但し、最大リスクにおける損害が非常に高価につく。その確率を一層下げる技術進歩が課題だ。LNGは当面をしのぐ有効な資源だ。しかし継続して安定使用できるのはそう長い期間ではない。石炭はどうだろう?原油に比べると石炭の数量的制約は緩やかである。地域的にも広く埋蔵されている。ただ石炭の利用は二酸化炭素の排出につながる。

しかし、化石燃料の利用が地球の二酸化炭素濃度の上昇につながり、それが地球温暖化をもたらしているという因果関係は、逆の指摘もあり、専門家の間で今なお意見が分かれている。環境負荷を軽減する石炭利用技術の開発と、地球温暖化と化石燃料使用の因果関係の検証、もっと根源的な「地球温暖化という事実の有無」自体もより長期かつ精細なデータを用いて検証することが求められている。

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